札幌高等裁判所 昭和25年(ネ)147号 判決
控訴代理人は、原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方は、事実関係について原判決に摘示するところと同一に陳述したから、これを引用する。(証拠省略)
三、理 由
被控訴人は、北海道中川郡美深町字富岡百七十八番地一畑二畝三歩同百七十九番地の一の内畑四反三畝十歩同百七十七番地の一畑三反七畝十五歩について、昭和十六年以来の所有者であり、右土地は右同年以来三部与の小作していたものであつたが、控訴人は、昭和二十三年六月十四日農地買収計画により、右土地を不在地主である被控訴人の小作農地と目して買収すると定め、これに対して、被控訴人は控訴人に対し、適式の異議申立をしたが却下せられ、更に、被控訴人は北海道農地委員会に、適式の訴願をしたがこれまた却下せられたことは、当事者間に争のないところである。真正に成立したと認めらるゝ甲第一号証の一乃至三甲第二号証の二乃至五同七乃至二十二甲第四号証の一、二、成立に争のない甲第二号の一および六甲第三号証甲第五号証乃至甲第七号証と、原審証人滝岡陽の証言当審における被控訴人本人尋問の結果を綜合するときは、被控訴人は従来中川郡美深町に居住していたが、昭和十三年二月七日鉄道省派遣軍属として中支方面に派遣せられ上海派遣軍に所属し、その後一時軍属を解除せられ華中鉄道管理局警務課に勤務したが、実質上に中支派遣軍の業務を担当し、昭和二十年三月頃再び軍属に編入せられ、終戦後捕虜となり、同二十一年四月頃美深町に帰還居住するものであるが、右被控訴人不在中も被控訴人の父母妻子は引続き被控訴人の家族として美深町に居住し、(但し父親はその間に死亡した)被控訴人の生活の本拠たる住所は、依然として美深町にあつたものと認められ、原審証人久保力の証言中これに反する部分は信用せず、他にこれを覆すべき証拠はない。本件の農地買収計画は自作農創設特別措置法第六条の二に定める遡及買収による買収計画で、昭和二十年十一月二十三日おいてに地主である被控訴人が本件農地の所在地である美深町に住所を有しないものとして買収の処置に出たものであることは、本件口頭弁論の全趣旨により明らかであるから、右認定の如く被控訴人は昭和二十年十一月二十三日当時において美深町に住所を有している以上、本件農地の買収計画はこの点で違法であるものといわなければならない。
然らば、被控訴人の本訴請求は正当として容認すべく、原判決は相当で、本件控訴は理由ないから、民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用して、主文の如く判決する。
(裁判官 浅野英明 臼井直道 鈴木豊蔵)